憑代の柩

「母は要に殺せと命じていたと思うね。

 横領に気づいていたから、それをバラすと脅して、要をいいようにしていた。

 要は要で、僕と馨の関係をずっと疑っていた。

 だから、馨を殺す動機はあった」

「ほんとのとこ、どうなんです?」

「何が?」

「貴方と、馨先生ですよ」

 何もなかったよ、と衛は言った。

 こちらを見て、嗤う。

「僕が殺したと思ってるのか?

 自分の想いを受け入れなかった馨を。

 そうだな。

 僕は遅れて別荘に行った。

 途中で、川から上がった馨を見つけたかもしれないな」

 まあ、ともかく、と衛は話を戻す。

「それからしばらくして、大学で、『佐野あづさ』という人間が僕に近づいてきた。

 ぎくりとしたよ。

 馨そっくりだったから。

 でも、その目には覚えがあった。

 それは、あのとき、母を睨んでいた少女の眼だった。

 奏は馨に似た顔を、更に似せるために整形し、僕に近づいた。

 佐野あづさという名前と戸籍を手に入れて」

「どうやって、それらを入手したんでしょうね?

 戸籍や名前は裏で売買されていると思います。

 でも、佐野あづさは、ちゃんとした大学教授の娘です。

 一体、どうやって」