憑代の柩

「横領はいけませんが」

「心配しなくても、僕がもう補填している」

 それはありがとうございます、となんとなく、要の代わりに礼を言ってしまう。

「馨さんは、要先生の婚約者なんでしょう?
 彼女のために、金を都合しても、売女ってのは……」

「母は、馨が好きなのは、僕だったと思ってる。

 それなのに、要を誘惑して、金を出させてたと。

 そして、そんな女が息子の側に居るのは、気に入らないと言っていたんだ。

 まったくの妄想だよ。
 でも、母は、それを奏に聞かせ、罵った」

 あのときの奏の顔が忘れられない、と言う。

「奏は、そのときの自分を僕が見ていたことを知らない。

 だけど、予感がしたんだ。
 彼女は必ず、僕らに復讐に来るとね。

 彼女は、母の罵りように、僕らのうちの誰かが、馨を殺したと思ったようだった。

 馨の死体は上がらなかった。

 でも、言ったろう?
 川縁に上がったのを見たという話もある」

「誰かが生きて上がった彼女を殺したと?」