憑代の柩


 


 戻ってみると、やはり本田は居なかった。

 鍵は開けっ放しだったので、一応、二人で室内を確認したあと、衛を浴室に連れていく。

 浴槽に足をかけ、そこに上がると、衛が、おい、と言う。

「此処に薬があったんですよ」

「薬?」

「前の住人が服毒自殺に使った残りを此処に隠してたみたいです」

 要るほど何かに混入し、残りを此処にしまったものの、なんだか心残りだったようで、命日には、確認していたようだ。

「あづさにも霊が見えていたのなら、彼女も気づいていたでしょう。

 本田さんが見たあづさの子供の頃の写真。

 本当に彼女のものなら。

 佐野あづさっていうのは、貴方の家庭教師だった馨さんの血縁者なんじゃないですかね?」

 衛の顔色はいつもにも増して悪かった。

「貴方は、流行さんの相方にそれを調べさせ、知っていた。

 馨の親族が、名を変え、偶然同じ顔の別人として貴方に近づいたというのなら、そこにはなんらかの意図があったはずです」

 よくない意図が――

「貴方は気づいていた。
 違いますか?」