憑代の柩


 

「ホラーより怖いんですけど」

 何故か本田を部屋に置いたまま、車で連れ出されていた。

 衛は無言だ。

 いや、だから、それが余計に怖いんだって、と思っていた。

「なんでこんなことをした?」

「お詫びにです」

「誰に対して?
 本田にか?」

 ああ、怒鳴られた方がマシだ、と思いながら、訊いていた。

「いいえ、あづささんに対してです。

 身代わりは所詮、身代わりなので、だから」

 あづさが自分にそうしろと言ったとは、さすがに言わなかった。

「私にそういう人間らしい感情はないと思ってたんですけど。

 止めに入ってくれたってことは、やっぱり、私、厭そうに見えたんですかね?」

 知るかっ、と怒鳴られる。

 そのまま止めた車のハンドルに衛は突っ伏す。

 あの川原まで来ていた。

「仕事、暇なんですか?」
と言うと、

「暇なわけないだろう」
という低いくぐもった声が聞こえた。

「どうして、止めに来れたんですか?

 たまたま?」