憑代の柩

「大丈夫ですよ。
 私、何も感じないんです。

 もう随分前に、そういう感情なくしてしまって」

 でも、頭に浮かんだ。

 川原で少年のように笑っている御剣衛の夢。

 本田の手が頬を撫で、もう片方の手に力がこもった。

 本田の唇が自分に触れた。

 いつか感じたのと同じ、柔らかい感触がする。

 あの日、あの車の中で。

 それを思い出しながら、目を閉じた。

 ふっと大きく息を吐く。

 自分の上で、こちらを見た本田に言う。

「あづさが自分の代わりをしろと言ってるんですよ」

「貴方はそれでいいんですか?」

「よくはないですけど。
 罰ですから」

「なんの?」

 そう言いながら、本田にはわかっているようだった。

 この部屋には、あづさの魂が残っているのはわかっていた。

 例え、こちらを振り向くことはなくとも。

 それでも、私は此処に衛を招いた――