憑代の柩

 洗面所を無言で見つめ、

「今も居るんですか?」
と訊いてくる。

「今は居ませんが、夜になったら現れますよ。

 ……たぶん。

 どうぞ、ゆっくりしていってください。

 玄関に水滴落としてく霊とか出ますけど」

 お茶でも淹れようと奥に向かいかけた背に本田が言った。

「おかしいんです」

 おかしいと言えば、今更だが、本田が私に敬語なのはおかしいが、深刻な顔をしているので突っ込めなかった。

「僕、消防士の友人と会ってきました。

 事故の時点では、あづさは生きていたらしいんです。

 おかしいじゃないですか」
という本田の声は震えている。

「あの時点であづさが生きていたのなら、あづさはいつ、死んだんです?

 要先生が生きたあづさを連れていったのに!」