憑代の柩


 


「あれっ? 本田さん」

 アパートのチャイムを鳴らした人間に、私は目をしばたたく。

「すみません。
 ちょっとお話が」
と玄関先に立つ本田は、中を軽く窺った。

「ああ、衛さんなら居ませんよ。どうぞ」
と中に通す。

 本田は、落ち着かなげに部屋の中を見回していた。

 家具も何も変わってはいないはずだが、住む人間が違うと、まるでリフォームしたように、がらりと雰囲気が変わったりする。

 小物や、衣服の置き場のせいかもしれないが。

 今がまさに、その状態のようだった。

「どうかしたんですか?」

「訊きたいことがあるんです。

 貴方は此処に何体かの霊が出るとおっしゃっていた。

 その中に、あづさの霊も居るんですか?」

 私は無言で洗面所を指差す。

「此処にいつも出るんです。

 私に気づかず、ポーチの中を覗いてる」

 本田は唇を噛み締める。