憑代の柩

「咲田(さくた)馨は、元はかなりいい家の娘だったようだが。

 両親を亡くして、相当な借金があったようだ」

「ようだって」

「俺はそういうことは突っ込んで訊かないようにしているから」

 随分、あっさりとした関係だな、と思ったが、衛と佐野あづさとのあっさり具合とはまた違うようだった。

「ところで、まだ衛の母親に首を絞められてるのか?」
と訊いてくる。

「え?
 ああ、今のところ、皆勤賞です」

 せっせとあの霊はうちに日参している。

「わかった。
 今日、衛はお前のうちに行くか?」

「帰りは送ってくれるみたいですけど?」

 じゃあ、衛が帰ったら、電話しろ、と言う。

「どういうつもりなのか、俺が見てやる」
と本を閉じる。

「あ、先生は、霊が見えるんでしたね?」

 そこで、要は、
「読むか」
といきなり本を投げて寄越す。

「衛の部屋からかっぱらってきた奴だ」

「あ、ありがとうございます」

 それは彼が読まないと言っていたミステリーだった。