憑代の柩

「なんせ、俺は誤解から、うっかり婚約者を殺した男らしいから」

「根に持ちますね~」
と苦笑いしながら、本を片付けている要の後ろ姿を見ていた。

「ところで、家庭教師の報酬ってそんなにいいものなんですか?」

「なんでだ?」

 要の指が少し止まった気がした。

「馨さんには借金があったんですよね。

 それを返せるほどのものなんですか?」

「まあ、かなりよかったようだぞ。

 俺は詳しくは訊いてないけどな。

 だから、衛の母親は、馨に衛が手を出してもいいように、多めに払ってるんだろうと言っていた」

「……要先生の婚約者なんですよね、馨さんて」

「そうだが。
 あまり気にしない人だから」
と衛の母親の話を締めくくる。

「その程度の女だと思っていたようだ。

 それで、衛のストレス解消になるのなら、それもいいと人に言っていた」

「人に言っちゃ駄目じゃないですかね」

「だが、報酬を決めたのは、衛の父親だ。

 あの人は単に、金銭感覚がずれてるから。
 馨も少しな」

「馨さんて、何者だったんですか?」