憑代の柩

 要は本を閉じ、振り返る。

「言いたいことがあるなら言え。

 背後をうろちょろするな」

「はあ。
 すみません」

「お前に後ろに立たれると、ぶっすりやられそうな気がする」

 それは、もしや、私に、ではなく、その婚約者にってことだろうかな、と思う。

 困って溜息をつき、どうしようもないので、腰を下ろしてみた。

「衛に何を言われた?」

「衛さんに言われたって言いますかね」

 事の始まりは本田だったと、ゆるゆると話し始める。

 聞き終わった要は笑った。

「衛は俺があいつを殺したと言ったか」

「なんで殺したんですか?」

 決めつけるな、と要はこちらを見る。

「なんで俺が馨(かおる)を殺す必要がある。

 警察はどう思ってたか知らないが、衛の父親と馨はほとんど面識がない。

 確かに、彼女を衛の家庭教師にしたのはあの人だが。忙しい人だったからな」

 馨というのか、その婚約者は。

「何か理由があると思ったから、衛さんはそう疑ってるんでしょう?」

 その言葉に要は嗤う。

「語るに落ちたな」