憑代の柩

 


 屋敷に戻ると、もちろん、自分を待っているような衛ではなかった。

 もう中に入ってしまっている。

 要の姿もそこにはなかった。

 衛は出かける前に、広げていた書類の後始末をしているらしく、書斎から出て来なかった。

 なんとなく、上の階に行くと、要の部屋から灯りが漏れていた。

 ドアが薄く開いたままだ。 

 声をかけるべきか、と迷っていると、

「……幽霊のように立つな」
と椅子に座っている要が言った。

 観念してドアを開けたが、その言葉の意味が今はなんだか重いな、と思った。

「先生――

 あ、いや、なんでもないです」

 この顔でちょろちょろしてすみませんというのもな。

 衛が要の婚約者が好きだったのなら、この二人の関係って微妙だな、と思った。