憑代の柩

「僕はあづさを利用したんだ。

 そっくりな彼女を置いておけば、罪の意識に苛(さいな)まされた要が真実をしゃべるかもしれないと思って」

 本田が唇を噛み締めたのがわかった。

「本田さん、殴っていいですよ」

 勝手になに言ってんだという顔で見たのは、衛本人ではなく、麻紀だった。

「……いえ」
と本田は手を握り締めた。

「僕は貴方を殴れない。

 彼女は本当に貴方を好きだったから。

 でも、彼女は自分が貴方に愛されてないのを知っていた。

 だから、僕と居たんです。

 彼女は自分がその人の身代わりであること、きっと、誰よりよくわかっていたから」

 その言葉を聞いたとき、一瞬だけ、衛の目に淋しそうな光が宿った。

 顔を無くした女を利用してまで、犯人を見つけたいと衛は言った。

『申し訳ないからな』

 あれはこういう意味だったのだ。