憑代の柩


 

 衛の到着に少し遅れて、自分たちは屋敷に着いた。

 一階にもある衛の書斎で、彼は呆れたように待っていた。

「僕に用事があったんじゃないのか」

「あるから来たんですよ。
 でも、うっかりカラオケ延長しちゃって」
と笑うと、衛は俯きがちに溜息をもらしていた。

「どっと疲れるわよね、この子と話してると」
と麻紀が衛の味方をするように言う。

「あっ、裏切り者っ」
と言ってみたが、

「いつ、あんたの味方になったのよっ」
と返されてしまう。

 とりあえず、これだけは訊かねばと麻紀が見たという、衛と一緒に居た女性について訊いてみた。

 デスクに腰で縋って立つ衛は、あれか―― と、どうでもよさそうに言う。

「あれは僕の恋人じゃない。 
 要の婚約者だ」

 え――

「別れたとか言う?」

「別れたっていうかな」
と衛は腰を浮かし、デスクの後ろの作り付けの書棚に本を戻しながら言った。

「僕の父親と一緒に流れて行ったんだ」

「……家庭教師の人だったんですか」