憑代の柩

 

 しかし、連絡をとってみると、衛はまだ仕事から戻っていなかったので、それまで、カラオケで時間を潰すことになった。

 なったというか、私の提案だ。

「あんたって、ほんと呑気ね」
と言っていた麻紀が一番真剣に曲を選んでいる。

「あのー、本田さん」

 次は彼女の番なのに、まだ曲を決めかねている麻紀の横に腰を下ろしながら呼びかけると、意外にバラードが上手い本田が顔を上げた。

「あづささんは首とか絞められてなかったですかね?」

「え?」

「あ、霊にですけど」

 どうだろう、と本田は首を傾げる。

「そもそも僕はあづさに霊が見えたっていうのも知らなかったし」

 あづさは徹底した秘密主義だったようだから、本田には言っていないというのもわかる気がしたが。

 それにしては、衛の方はあづさに霊が見えるのを知っていたな、と思う。

「夜ごと、誰かが私の首を絞めてるんですよね~」

 ぼそりと言うと、ひっ、と本田と麻紀が身を引く。