憑代の柩

 


 大学構内を歩いていた私は、いきなり誰かに突き飛ばされた。

 カシャーンッという音に上を見、下を見る。

 校舎横の側溝に本田が落ちており、自分の足下には、植木鉢が散らばっていた。

 もう一度、上を見たが校舎の上に太陽がかかっていて、眩しく、よく見えなかった。

 しかし、ベランダに鉢を置いておくなよ。

 未必の故意か? と思いながら、本田に手を差し出した。

「大丈夫ですか?」

 本田は、その手を取らないまま、側溝から這い出してきながら、

「君は誰?」
と訊いてきた。

 絶対にあづさじゃない、と言う。

「なんでですか?」

「あづさは君みたいな冷静な女じゃないからだ」

 本田はジーンズをはたいて立ち上がる。

「彼女は僕を本田さんとは言わないし。

 記憶がなくとも、性格は変わらない。

 彼女が今の君みたいになるとはとても思えない」

「そうですか」

 私は腕を組み、相槌を打ちつつ、上を見上げた。