憑代の柩

 溜息をつき、椅子を彼女に向き直す。

「わかりましたよ。
 数日中になんとかします」

 そのとき、誰かが歩いてくる音がした。

 バインダーを手にやってきたのは、若い看護師だった。

 この病棟に居るだけのことはあり、口の堅い女だ。

 軽く頭を下げ、入ってくると、

「先生、また眉墨さんが」
と言いながら、それを差し出す。

「わかった。行こう」

 眉墨は、糖尿病で入院している小煩い親戚だ。

 看護師を下に見て、横柄な態度をとって困っている。

 麻紀が看護師になってくれればよかったのに、とふと思った

 立場的にも性格的にも、あれに迂闊に逆らおうとするような親族は居ない。

 看護師が出て行ったあと、まだ居る女に向かい言った。

「ほんとになんとかしますよ。

 そう長く持つとも思ってないし」

 そう言ったあとで、少し思い出し笑いをする。

 そんな自分を彼女は不快そうに眺めていた。