憑代の柩

 


 夜の病院は不気味だ。

 ――と、人は言う。

 自分にとっては、ただ、落ち着く静かな場所だが、と要は思った。

 入院している我が儘な親戚連中が、そこが痛いのあそこが痛いの言い出さなければの話だが。

 そもそも、本当に重篤な患者はそれぞれの権威と言われる医師の居る病院にすぐ回すので、此処に居るのは、だいたい、成人病の治療か、整形の人間だけだ。

 今も、心静かにカルテの整理をしていると、
「要」
と、ふいに呼びかけられた。 

 入り口に女が立っていた。

 その女はそこから入って来ないまま言う。

「あの女、生きてるじゃないの」

「そのようですね」

「殺さないと」

「またですか。
 厭ですよ、めんどくさい」
と机の上に並べたカルテに向き直る。

 いつの間にか、すぐ真後ろに、その女は立っていた。

「あんた、私に逆らえるの?」