憑代の柩

「美容師の方たちも怪我されたんですよね」

「でも、彼女らは隣の部屋に居たからな。

 まあ、今は全員、元気だ」

 事故の直後のことを身体が覚えていて、あの車を厭がるのだろう、と衛は言う。

 だが、そういえば、後部座席はそんなに厭ではなかったのだが。

 私はたいした傷でなく、助手席に転がされていたんだろうかな、と思った。

「あの、そういえば、爆破があったとき、衛さんは何処にいらしたんですか?」

 衛は黙る。

「前撮りなら、貴方も必要だったはずですよね。

 それ以前に、花嫁の姿を見たいと思うはずですが」

「特に見たくはない。

 僕は別に準備もいらないから、行きつけの店でお茶を飲んでいた」

「私なら厭です。
 そんな新郎」

「何故、僕の居場所を訊くんだ?」

「いえいえ。

 あの場に居たのは、佐野あづささん、花屋の店員、つまり私と、美容師の方々、要先生、牧師さん、それに、撮影の方々ですかね?」

 すると、牧師の妻も手伝いに来ていたと言う。

「ああ、奥さんもいらしてたんですか」

「でも、彼女は撮影スタッフとともに、祭壇の方を飾り付けてくれていたから、無傷だったが」