憑代の柩

 衛の言葉が終わる前に言った。

「男の人を見ました。
 年配の」

 ファイルを置きかけた衛の手が止まる。

「何処で見た?」

「要先生の部屋の近くです。
 奥の廊下を横切ってましたよ」

「生きてたか?」

「死んでたんじゃないですか?
 要先生も何も言わなかったし」

「……要は霊は見えるぞ」

「えっ、そうなんですか!?

 何も言わないから、水臭いっ」

 そういうの水臭いって言うのか、という顔で衛はこちらを見ていた。

「ところで、お母様は、いつから意識がないんですか?」

「僕が高校生の頃からだな。

 父親が死んで、しばらくしてからだ」

「お父様が亡くなられたショックで倒れられたんですか?」
と言うと、衛は吐き捨てるように言う。

「あれがそんな殊勝な人間か」

「知りませんよ。
 首絞められたことしかないんですから」

「殊勝な人間がお前の首を絞めるのか?」