憑代の柩

 


 そろそろ帰りたいなあ、と要と別れたあと、屋敷の廊下を歩いていた。

 火のない暖炉のところに戻ると、衛はソファに座り、何かを読んでいた。

 今日は本ではないようだった。

 ちゃんと仕事してんだな、と思いながら、前に座り、黙って、彼を観察していた。

 それにしても、奇麗な顔をしている。

 男のくせに、無駄だろう、と思った。

 私のこの頓狂な顔にその要素を少し分けて欲しい、と思ったのだが、そういえば、これは他人の顔だった。

 私は私で、無礼千万だな、と思う。

 だが、あづさがこの顔だったときには、あまり頓狂には見えなかったようだから、そう見えるのは自分のせいなのかもしれない。

 もらした溜息に、ようやく気づいたように、衛はこちらを見る。

「居たのか」

「居ましたよ、結構長く」

 肘掛けに頬杖をついたまま言うと、じゃあ、話しかけろよという顔で、衛はファイルを閉じた。

「決めたのか?
 此処に来るかどうか」

「帰ります。
 此処は落ち着かないので」

「また何か出たのか」
「家政婦さんと――」

「あれは生きている」
「わかってますよ」