憑代の柩

 要は自分の話を聞くと、笑い、

「大学であづさがよく思われていないのは、入学してすぐ衛に猛アピールし始めからだ。

 みんな不文律みたいなのがあって、衛を遠くから取り巻く感じだったのにな。

 しかも、それであづさが衛を射止めてしまった。

 図々しい女の勝利と思われたんだろうな」

 だけど、福田さんにはそんなこと関係ないだろう?
と言う。

「ま、強引に押してきたからって、落ちるような男じゃないんだがな、衛は」

「そうですよね。

 だから、全然、そんな感じに見えなくても、衛さんは、あづささんが好きだったんですよね、ほんとは」

 要が彼をなだめるために、こんな計画を持ち出さなければならないほどに。

 自分の前では澄まし返っているが、事故直後、要の前ではとり乱していたのかもしれない。

 だが、要は、

「いや、それはどうだか」
と答える。

 相変わらず、なんだかわからんな、と思ったとき、ぞくっとするような気配を感じた。

 衛の母かと振り向いたが、廊下の向こうを年配の男が歩いて行くところだった。

 無意識のうちに、要の腕を掴んでいた。

 彼は黙ってこちらを見下ろしている――