憑代の柩

「ドレスは急いで作れ。

 金は幾らかかっても構わんが、時間があまりないことだけは忘れるな」

 そう言い、衛は出て行ってしまった。

 申し訳ないってなんだろう。

 っていうか、あの人、ほんとにあづささんのことを好きだったのかな。

 まあ、あまり感情を表に出さない人だから、それでそう感じるだけなのかもしれないけど。

 そんなことを思いながら、あの伏せられた写真立てを起こした。

 なんだかこのままでは、可哀想な気がしたからだ。 

 何があったか知らないが、衛は親を疎んでいたようだ。

 だが、腹を痛めて産んだ子に蔑(ないがし)ろにされては、親として辛いだろうと思ったのだ。

 写真の中の女性は、本当に衛に似ていた。

 この美貌を受け継いで得したこともあるだろうに、あんなに邪険にしなくても。

 写真立ての中の彼女は微笑んでいたが、ずっと見つめているうちに、それが悪鬼のような表情に変わって見えた。

 うわっ、と手を離しそうになり、なんとか堪える。

「おい」
という声がして、振り向くと、よろけた自分を要が支えていた。