憑代の柩


 


 食事のあと、お湯の沸く音を聞きながら、ベッドに転がり、流行から渡されたあづさの経歴を眺めていた。

 チャイムが鳴り、それをベッドの上に伏せて、起き上がる。

「はーいはいはいはい」
と相も変わらず適当な返事をしながら、ドアを開けたが、誰も居ない。

 蛍光灯の灯りの下、ぽつぽつとドアの前にだけ水たまりが見えた。

 ノブを掴んだまま、辺りを見回してみたが、その水滴は何処からも続いてはいなかった。

 うーん、と一節うなり、ドアを閉めた。

 魚眼レンズから、そうっと覗いてみるが、やはり、誰の姿も見えない。

 廊下の向こうの手すりと、その先の住宅が闇の中に見えるだけだ。

 だが、突然、足音が聞こえて来た。

 階段を上がって来る、少しせかせかしたような足音。

 体重はぼちぼち軽そうだ。 

 コンクリートの廊下に軽く響く。

 その足音は部屋の前で止まった。