翠くんは私の両腕を掴んだ。


「どうしたらいいか分からないまま時間がたって、呼吸もどんどん小さくなっていって、白雪姫のからだが冷たくなっていって。

ああ、このまま死んじゃうのかなって思ったら、悲しくて」


翠くんの言葉が胸にしみわたる。


不謹慎、なのかもしれないけど。


悲しいって思ってくれたのが、嬉しくてたまらない。


「これが最期になるのなら、キスしようって思って」


「え!?」


爆弾発言に大声で聞き返す。



「キス、しちゃった」



にこっと笑う、翠くん。


ズキュン、私は心臓を矢で貫かれるような痛みを感じた。


それはずるいって、翠くん。


何も言えず口をパクパクさせている私をそっちのけで、翠くんは話をどんどん進める。


「そしたら、呼吸が戻って、身体があったかくなって。

すごく…すごく嬉しかった」


また翠くんは私をぎゅっと抱きしめた。



「好きだよ」



おだやかな言葉が、優しい言葉が、私の心を包み込んでいく。


いつも優しいあなたが、


ときどき怖いくらいかっこいいあなたが、



「私も、好き」



大好き。


翠くんは穏やかに微笑むと、その唇を私に重ねた。



fin.