こんな気持ちになったのは後にも先にもこの男だけで、なんと形容すればいいのかわからない。


「……っう」


どうしてあんな出会い方をしてしまったんだろう。

どうして真尋は、都築真尋なんだろう。

考えてもどうしようもないことを考えて、涙が止まらないよ。


「……葵?」


私の様子に気付いた真尋がこちらを伺おうとして、私は声を荒げた。


「見ないで!」


今は、ごめん。馬鹿なことを考えてしまう私を見られたくないの。

真尋はいつもその漆黒の瞳で、全てを見透かしたように私を捉えるから。


「……」


真尋は何も言わずに、そっと私の頭を撫でてくれた。

その大きな掌に安心して、また涙が溢れる。


もっと自然に、普通の男女として出会いたかった。

そしたら、こんな気持ちになることもなかったのかな。

ふたりの間に、タイムリミットなんて存在しなかったのかな。


真尋を思えば思うほど、心がぐちゃぐちゃになって苦しいの。

ねぇ、誰か教えてよ。


この気持ちの正体は何……?