「私達は愛を理解出来ないでいるのに、お母さんは家族を裏切ってまで真尋のお父さんを愛してるなんて……皮肉だね」


真尋は私の言葉を、ただ静かに聞いていた。

穏やかな時間が流れているはずなのに、切ない。


この身が千切れそうな想いを、後何度味わえば楽になれるの?

7月8日。私達の逃亡劇、3日目。

残された時間は4日間だけ。

4日経てば、苦しみは終わるの?

愛に飢えた私達を蝕むこの痛みは。


「……寝るか?」

「……ううん、まだ」


まだ、もう少し。

もう少しだけ……このままで。


真尋の温もりを右側に感じながら、ただ全神経をそこに集中させる。

忘れないでいたい。私達ふたりの世界が終わる瞬間でも……この温もりだけは、絶対に。


「ねぇ。何か面白い話してよ」

「はぁ?んなのねえよ」

「あるでしょ、ひとつくらい」

「ねえって」

「……じゃあ……過去の思い出話でいいよ」

「……え?」