窓を叩く激しい雨音で現実に意識が引き戻された。

10センチの距離にはやっぱり端麗な真尋の寝顔があり、何故だか少しホッとする。


「……まだこんな時間」


枕元に置いていたケータイのサイドボタンを押して時間を確認するも、まだ4時前。

窓の外も暗いわけだ。


雨はあの日を思い出す。

私と真尋が出会った日。

あの日も、土砂降りの雨だった。


もしあの時あの電話の内容を聞いていなかったら……お母さんが不倫をしているという事実を知ることがなかったら、私はどんな運命を辿っていたんだろう。

きっと今とは、何もかもが違っていたはず。


あの夜、真尋の父親──“都築嶺二”に電話をかけたことは間違いじゃなかったと思う。

会話を聞いてしまった時点では疑惑でしかなかったことが、電話をかけ、真尋に繋がったことで確信に変わった。

傷つかなかったわけじゃないけれど、かもしれないと疑いながら過ごすよりも自分の意思で選択できる今の状況の方がよっぽどいい。