それを愛と呼ぶのなら

少し熱を持ったケータイを真尋に手渡した代わりに返ってきたのは、短い返事。


昼間の蒸し暑さを冷ますような少し冷たい風が私達ふたりの間をすり抜けていく。

その風は、一体どこから吹いていて、どこへと向かうんだろう。


「点灯、始まったみたいね。行こう」

「ん」


すくっと立ち上がって、再び受付へと戻る。

小さな子どもや学生、カップルや夫婦らしき人達も続々と集まってきた。

灯を燈してもらった灯籠を手に、水辺へと向かう。

まだ始まったばかりなのでそこには数える程の輝きしかなかったけど、


「綺麗……」


思わずそんな言葉が口を衝いて出る程、弱くて儚い光は美しかった。

腰を曲げ、その中にそっと笹舟を浮かべる。

水の流れにゆらゆらと揺らめく灯火は、何故だかわからないけど私の心をぎゅっと締め付けた。


「ありがとう、真尋」

「もういいのか?」

「うん。ここがいっぱいになるのも見てみたかったけど……いいの」


何時間かかるかわかんないしね、と付け足すと、真尋は納得したようにまた私の前を歩き始めた。