それを愛と呼ぶのなら

真尋から手渡されたのは、今さっき自分が預けた私のケータイと、もうひとつ、黒いケースを付けた私のと同じ端末。


「……何、これ?」

「俺のケータイ」

「それは知ってる。なんで一緒に渡したの」

「お前に俺のLINE消させるため」

「……なんで私が」

「それ、お前だけには言われたくねえな」

「……いいの?」

「いいよ。お前の番号とアドレスさえあれば問題ないだろ」


ふいっと顔を逸らして、何でもないことのように言われた言葉。

お前のさえあれば……ですって。


「……わかったわよ、消すわよ」

「早くしろよ」

「煩い」


アイコンを長押しして左上に現れた“×”のマークをタップすると、画面上から緑のアイコンが消えた。

今時連絡手段はLINEばかりで、友達とはもうメールアドレスや電話番号を交換したりはしない。

LINEを消してしまえば、それで終わりの薄っぺらい関係性。


「はい」

「ん」