それを愛と呼ぶのなら

平日のお昼だというのに、沢山の人とすれ違う。

ケータイ片手に早足で歩くスーツ姿の人、友達とはしゃぎながら楽しそうに笑う大学生くらいの男女。

話されている言葉は大抵関西弁で、何だか異世界に来たみたい。


「関西弁って、どんなのだろ」

「何、突然に」

「生まれも育ちも東京だからさ、関西の言葉なんてテレビくらいでしか聞いたことなくて」


だから気になったの、と続けると、真尋は軽く笑って、


「そんなもんだろ。まぁ俺は──」


言いかけた言葉を飲み込んだ。

俺は、その先に続くはずだった言葉が気になりはしたものの、それを問える立場ではないことは重々わかっていたから。

正体のわからない何かに傷ついて、私は俯向くことしかできなかった。




「嘘だろ」


真尋がそう言ったのは、目的のビルを前にした時だった。

建物に人気はなく、観覧車も動いていない。自動であるはずのドアが開くことはなく。

これは、もしかしなくても……、


「休館日……」