それを愛と呼ぶのなら

でもその言葉は、痛みを知ることも出来ないし知らせることも出来ないお互いにとって、何の救いにもならないんだろう。


世界で一番不幸なのは自分達だ、なんて、口が裂けても言わない。私達は悲劇のヒロインを演じてるわけじゃない。

ただ必死に、運命や境遇という名の真っ黒な海を、溺れそうになりながらもがくだけ。

そして次第に、呼吸が苦しくなっていっただけ……。




プラネタリウムが終わっても、私はすぐに動くことが出来なかった。

怪訝そうに顔を覗き込んできた真尋にはっとして、体を起こす。


「大丈夫か?」

「うん?……うん、大丈夫。ボーッとしてただけ」


慌てて荷物をまとめ、私達以外に誰もいなくなってしまったホールを、足早に後にする。

恐らく同じ上映を見ていたのであろう人で賑わうトイレの前を通り、出入り口へと続く階段を並んで上った。


「綺麗だったね」

「……そうだな」

「天の川のことも教えてくれたよね。今日、見れるかな」

「田舎ならまだしも、大阪だぞ?」


うーん、駄目かぁ……。

がっくりと肩を落とした私の頭に、ぽん、と大きな手が乗せられる。


「大阪駅、観覧車あるみたいだけど」


ぶっきらぼうな、必要最低限のことだけを簡潔に述べた声。それは、私の心を躍らせるには十分だった。


「観覧車?あるの!?乗りたい!」


ヒールを鳴らしてはしゃぐ私に、真尋は呆れたように眉をハの字に曲げる。