それを愛と呼ぶのなら

受付で、1時上映開始のチケットを2枚購入する。

予定通りの時間に着くことが出来たので、開場までもすぐだった。


「プラネタリウムなんか久しぶりに来た」

「私も。こんなのだったっけ」

「覚えてねえ」


クスクスと笑いつつ、あまり埋まっていない席の中から、丁度真ん中辺りを選んで腰を下ろす。

落ち着いた雰囲気に、思わず目を閉じてしまう。


「寝るなよ」

「寝ないわよ」


寝ないけど、なんか……安心する。


初めての土地で、初めての場所で。

当たり前だけど、すれ違う人達は誰ひとりとして私達のことを知らない。


『皆さん、こんにちは。ようこそ、大阪市立科学館へ──』


職員の声によるアナウンスが流れ、間も無くしてプラネタリウムは始まった。

星空へのパスポートという命題で進められたそれは、想像していたより綺麗で──ずっと綺麗で。

スクリーンに投影される星達を眺めては、自分がいかにちっぽけな存在なのかを思い知らされる。




こんな大きな世界では、私達の悩みなんて大したことないのかもしれない。

私達よりももっともっと苦しんでいる人は、涙に唇を震わせる私達を幸せ者だと呼ぶのかもしれない。

何が不満なんだ。十分じゃないか。と。