それを愛と呼ぶのなら

「……俺もだよ」


ぽん、と頭の上に乗せられた大きな掌。

その温もりが伝わる度に、涙が次々と溢れ出してしまう。


「俺は……器用じゃないし、優しくも出来ねえけど……もし葵が望むのなら、これまでの空白をふたりで埋めよう」


私達は似ている。多分、他の人が思う以上に。

置かれていた環境も、傷も、痛みも。

そんな真尋を、今更拒むわけなんてないじゃない。


「……うん、ありがとう」


ありがとう、真尋。

やっと今、地に足がついた気がするよ。




崩れてしまった化粧をさっきよりも少しだけ薄く直して、真尋と共にマンションを出た。

照りつける日差しが、ジリジリと肌を刺激する。

ちらりと隣を見上げると、涼しい顔をした真尋の額にも汗が滲んでいた。


んー、こんなに暑いと……


「アイス食いてえ……」


ぽつり、と真尋がこぼした一言は、まさに今私が考えていたこと。

それだけで、じんわりと心が温かくなる。


「じゃあ、コンビニ寄ってこっか」

「そうだな」