それを愛と呼ぶのなら

今私きっと、ファンデで隠したって意味のない程、真っ赤になってる。


「……何、言ってんの」


真尋が言ってくれた言葉を頭の中で反芻しながら、溢れそうになるものを堪えようと、ぐっと唇を噛む。

歪んでいるであろう顔を見られたくなくて俯いたのに、真尋はそれを見逃してはくれなかった。


「……なんで泣いてんの」

「泣いてないわよ……っ」

「声震えてんじゃねえか」


ずるい。ずるいよ。

自分は顔を逸らしたくせに、私の様子がおかしかったら目を逸らしてくれないんだ。

なんてずるくて、優しい男。


「ありのままの私でいいなんて言ってくれる人……いなかったから」


今まで付き合ってきた人達はみんな、私の中身まで知ろうとしなかった。

“古谷葵”の名前を最大限利用しようとして、それに気付いた私は相手を信じられなくなって、すぐにダメになる。……ううん、元々信じてなんかなかった。

触れることを赦した相手にすら、本当の私を曝け出そうとは思えなかったの。


泣きたくないのに、次々と溢れるこの熱いものを止める術を私は知らない。

小さな嗚咽を漏らすたび、自分がどれだけ愛に飢えていたのかを痛感する。