それを愛と呼ぶのなら

長い前髪で隠していたそれをレーザー治療で消したのは、バイトを初めてすぐの頃。

美容整形の部類に入ってしまうため保険が効かず、全額支払いだったのは痛かったけど、コンプレックスが消せるなら、と、財布の口は緩かった。

それから暫くはケアが必要だったものの、今はもう痕すらない。


目を背けたい部分を隠して隠して、消し去った。


「……何が本当なのかしらね」


隠してる面では、私もお母さん達と変わらない?

……ううん、違う。一緒にしないで。

自分が綺麗だ、なんて言わないけど、あの人達程真っ黒なんかじゃないわ。




化粧を終えて真尋の元へと戻ると、彼は露骨に嫌そうな顔をした。


「……何よ」

「別に」

「別にじゃないでしょ、何」


反応に納得がいかず、ふいっと顔を逸らした真尋に体ごと詰め寄ると、彼はそっぽを向いたまま、せっかくセットした私の髪をぐしゃぐしゃと掻き乱した。


「近けーよ」

「ちょっ……やめてよ、もう!」

「……化粧しない方がいいだろ」

「……え?」


しっかりと耳に届いた言葉はあまりに予想外で、思わず聞き返してしまう。

真尋はやっぱり顔を逸らしたまま、でも短い髪がかかる耳を少し赤く染めて、ぶっきらぼうに言い放った。


「ありのままのお前の方が、……綺麗に見えるけど」