それを愛と呼ぶのなら

ケータイで経路を調べてみると、大阪市立科学館の最寄り駅である淀屋橋までの所要時間は、地下鉄御堂筋線を使って、5分。

ホームページによると、そこから1キロ程歩くらしい。


「何時開始の観る?」

「1時くらいでいいんじゃねぇか?昼はここで食えばいいだろ」

「そうね」




朝ご飯を食べ終わった後、食器を洗おうと席を立とうとするも、横から伸びてきた腕に阻止された。

俺がやる、そう言った真尋は、私の返事を待たずに食器を持ってキッチンへと行ってしまった。

ここは任せておいた方がいいんだろうなぁ……と、テーブルに頭を乗せ、スウェットの袖を捲くって洗い物をする真尋の姿を、ぼうっと眺める。


私達に特別な感情はない。

だけどもし……もし仮に、この男が私の最愛の人だったとしたら──朝起きて、目が覚めるとそこにいて、朝ご飯を一緒に食べて、何でもない時間を過ごすこの一瞬を、“シアワセ”だと感じるんだろうか。

世の男女は、当たり前にその感情を抱いているのだろうか。