それを愛と呼ぶのなら

「真尋って何かスポーツしてた?」

「高校に上がるまで陸上してた。今もトレーニングルームで体動かしたりはしてたけど」

「トレーニングルーム?」

「家にあるんだよ」


トレーニングがある家って……一体、どんなのだろう……。

考えて、でも答えなんて見つけられる気がしなくて、巡らせた思考を止めた。


「お前は?」

「中学の時はテニスしてたよ。高校に入ってからはバイト三昧だったけど」

「はは、俺も」


放課後の思い出を語ろうとしても、脳裏に浮かぶのはバイトに励む自分の姿だけで、他には何も思い浮かばない。

それでなくても、憂鬱な学校終わりに誰かと行動をすることが私にとっては苦痛だった。


「何のバイト?」

「スーパー。そっちは?」

「カフェの厨房」

「へぇ。ホールに出たりはしなかったの?」


真尋ほどの顔立ちなら、それ目当てにお客さんが来そうなのに。

勿体無い、と内心思っていると、真尋が呆れたように小さく笑った。


「接客できると思うか?この俺が」


……なるほど、そういう問題があったのか。

どうやっても、ニコニコしてオーダーをとる真尋を想像することが出来なくて、私は笑いながら首を振る。