ふたりだけの空間に、何の違和感もない。

まるで、ずっと前から彼のことを知ってたみたいに。


「真尋はどこに行きたい?」

「……どこでもいい」

「嘘。行きたいところ、絶対あるでしょ」


身を乗り出して尋ねる私に、呆れたように息を吐く真尋。


「俺に合わせなくていい。お前に合わせるから」

「えー……」


なんか……子ども扱い。

むぅ、と口を膨らませると、真尋は僅かに笑って私のおでこを弾いた。


「ちょ、何するのよ」

「間抜けな顔してっからだ」

「しっ……してないわよ!」


精一杯睨みつけても、真尋は怯むどころか余裕の表情。


……周りにいた男は、私をこんな風に扱わなかった。

みんな笑顔の裏に下心が見え隠れして……それでも、この中の誰かが私の心にある隙間を埋めてくれるんじゃないかって、ずっと淡い期待を抱いていたの。


結局、それを成し遂げられた人は誰ひとりとしていなかったけれど。