「暑……」


大阪の湿度が高いって話はテレビか何かで耳にしたことはあったけど、まさかここまで蒸し暑いとは。

さっきまではクーラーが効いた快適な環境にいたのに、もう腕や額には汗が滲んでいる。


「取り敢えずどこか店入るか」

「そうね」


真尋が行く一歩後ろを歩く。一定の距離を保ちつつ、私達は同じ場所を目指していくの。

今も、きっと、最後まで。




駅構内の洋食屋さんで私はハンバーグを、真尋はカルボナーラを食べてお腹を満たし、その後大阪市営地下鉄御堂筋線に乗り込んだ。

そこから2駅先の中津まで移動した頃には、時刻は2時を回っていた。


「ここだ」


立ち止まった真尋に続いて、そこに立つ建物を見上げる。

都心部、梅田から徒歩圏内の場所にある茶色いマンション。


「正直、こんなに綺麗だとは思ってなかった」

「建ってそんなに経ったないらしいからな」

「そうなんだ。鍵は?」

「暗証番号」


へぇ。最近のセキュリティーシステムはすごいんだなぁ。


「取り敢えず荷物置きに行こう」

「うん」


ふたり並んで、マンションに足を踏み入れる。

エレベーターで6階まで上った、フロアの一番奥の部屋。


「すごい。綺麗」

「1週間暮らすには十分だな」

「そうね」