それを愛と呼ぶのなら

ジト目で彼女を見るけど、効果がないことはもう知っている。

その時ふと、妃名子が履いている青いスカートに目がいった。


「そんなスカート、持ってたっけ?」


私の問いかけに、妃名子がにやりと笑う。


「昨日買ってきたんです。例の若社長の目に留まるように」

「例の……って、なんで?」


廊下を歩きながら私が首を傾げると、妃名子は軽やかな足取りでくるりと回った。

スカートのプリーツが、踊るように揺れる。


「ブルー・アマートって社名じゃないですか。イタリア語で書くと、“blu amato”。愛しい青って意味が──」


妃名子の言葉を聞き終わる前に、左肩が誰かとぶつかった。

その拍子に、持っていた資料や筆箱が床に散らばってしまう。