それを愛と呼ぶのなら

どうしようもない愛おしさが胸いっぱいに溢れて、今すぐ彼を抱き締めたいと思ったのに隣に真尋はいなくて、ただその現実が苦しくて。

ぎゅっと唇を噛んだ時、ポケットの中に入れていたケータイが震えた。


クラスメート達と繋がっていたLINEは消したし、アドレスや番号は教えていない。

広告メールは受け取り拒否にしてるし、LINE以外で連絡をとることが可能なお母さんは目の前にいる。

だとすれば、それは……。


震える指先でケータイを操作し、縋るようにメールボックスを開けた。


『……っ』


ケータイを握り締めて、漏れる嗚咽を噛み殺す。

画面に表示されたのは、愛しい男の名前と【頑張れ】のたった3文字。

十分だった。

たったそれだけだけど、真尋の気持ちを感じられたから。


脳内に、笑う真尋の姿が浮かび上がる。


頑張れ。

頑張れよ、葵。

負けるな。

頑張れ──。




瞼を薄く開くと、光が一気に飛び込んできた。

体が重い。