それを愛と呼ぶのなら

東京へ向かう新幹線の中で、お母さん達は静かに話し始めた。


高校生の頃から大学卒業まで付き合っていたこと。

だけど、大きな貿易会社の跡取り息子だった真尋の父親が、卒業と同時に親の決めた相手と婚約を取り付けられてしまったこと。

23歳で結婚したものの、お母さんとの関係はその後も続いていたこと……。


それと……私の本当の父親が、真尋の父親であるということも。


少しの沈黙が流れた後、真尋の父親が口を開いた。

ふたりが大阪にいることは、離婚した奥さんから連絡を受けて知ったのだ、と。

そして、マンションの詳しい場所は、真尋本人からメールがあったと……。


そこで悟った。

少なくとも真尋は、自分のお母さんに会いに行った時にはもう、こうすることを決めていた。

母親から父親に連絡がいくことを予測して、敢えて会いに行ったんだ。

私を、元いた場所に帰すために。