私の姿を見るなり手を伸ばした真尋にタオルを渡し、脱衣所に戻る。浴槽を確認すると、お湯は全て抜けきっていた。

濡れてしまった服を先に脱いで、お風呂を念入りに洗う。

お互いに何も知らないけれど、私なんかのために駆けつけてくれた真尋には、少しでも気持ちを返したくて。

でも何より、お母さんが入った後なのが嫌だったの。


お風呂のスイッチを入れてからシャワーを浴びる。

降りかかるお湯は気持ちいいのに、私の心にかかった靄が晴れることはなかった。




再度リビングの扉を開くと、椅子に座る真尋はタオルを頭にかけて俯いていた。


「お待たせ。そろそろお風呂も沸く頃だと思うから、ゆっくり入ってきて」

「ん……。悪い、ありがとな」

「ううん、全然。着替えは……お父さんのでいい?」

「任せる」


ゆっくりと立ち上がった真尋に、脱衣所の場所と洗濯物は籠に入れておいて、と伝える。すると真尋はコク、と頷いて、少し気怠そうに廊下を歩いていった。