それを愛と呼ぶのなら

画面が通話中に切り替わったケータイを、私の手に戻す。

その行為の意図が汲み取れなくて、私はただ真尋を見つめるしかできなくて。


「出ろ」


……は?

何、言ってんの?

電話口の向こうにいるのがお母さんだってこと、わかってて言ってるんだよね?

なんで……?


ケータイのスピーカーからは、お母さんの甲高い声が耳障りなノイズのように途切れ途切れに聞こえてくる。


「いいから。早く出ろ」


有無を言わせない強い口調に、視線に、私は催眠術にでもかかったかの如く、意思とは違う行動をとった。


「……はい」

『葵!?』


もう二度と耳にすることはないと思っていた大嫌いな人の声が、私を現実世界に引き戻す。


『今、真尋くんと大阪にいるって本当なの!?』


なんであんたが知ってんの。

真尋が言った?……ううん、そんなわけない。

共に復讐をすると決めた真尋が言うはずない。

じゃあ……。


『家にいないと思ったら……!何か言いなさい!』


なんで私、責められてんの。

おかしくない?

悪いのは、どっち?