「……ここにしよう」


うん、と何かに頷いて、券売機に千円札を入れた。




電車で22分。そこから徒歩で5分ほどのところに、目的地と定めたその建物はあった。

平日だからか、そんなに人は多くないけれど、だからと言って閑散としているわけではなく。

偶然選んだ場所だけど、沈んだ気分を紛らわせるにはちょうどいい場所かもしれない、と思うと少しだけ気が軽くなった。


「大人一名様ですね。2300円になります」


使い慣れた財布から2500円を取り出してカートンに載せると、ガラスの向こうにいる茶色の髪をひとつに束ねた女性が少しの間の後、おつりの200円とチケットを私に差し出した。

入口へと歩みを進めながら、私は首を傾げる。


これ、なんて魚だろ?

海遊館と書かれたチケットには、どん!と大きな魚の写真。