それを愛と呼ぶのなら

「元気そうで安心したよ。……今の旦那も、優しそうだし」


ねぇ。やめなよ、その顔。

嘘か真か、見抜くのが難しいくらいに上手になってしまった作り笑い。

それで、一体何人に心を隠してきたの。

一体どれだけ、自分を隠してきたの。


「母さん、今幸せ?」

「……うん、幸せよ」

「そっか。……だったら」


もういいよ。やめてよ。

見てて苦しいよ。何も言わないで。

その先の言葉を、私は聞きたくない。


「忘れていいよ、母さん。……都築真尋という人間も、都築嶺二という人間も」


聞きたくないのに。


「何、言ってるの……?」


台詞には似合わないほど穏やかな声で放たれた真尋の突然の言葉に、お母さんの声が震えた。

それでも真尋は、顔色ひとつ変えない。


「母さんの中に、俺もあの男も存在しなかったことにすればいい」

「そんなの……っ」

「忘れてくれ。忘れて……今の幸せを守り抜いてくれ」