予期しなかった出来事だったのか、真尋の手は数瞬の間、宙を彷徨い──あろうことか、お母さんを自分から引き離した。
「真尋……?」
お母さんの声色が、困惑を帯びている。
ドラマや映画だったら、こういう時は抱き締めかえしたりするのかもしれない。
だけど真尋は、そうはしなくて。そこに含まれる意味が理解できてしまうから、つらかった。
「……久しぶり、母さん」
「久しぶりじゃないわよ!なんで大阪に……?」
「……まぁ、ちょっとな」
真尋の視線が私に寄せられ、お母さんがそっと振り向く。
慌てて頭を下げたけど、次に顔を上げるのが、少し怖かった。
だってそうでしょう?
1人の女性の人生を、自分の母親が狂わせてしまったかもしれなくて。
その娘が目の前にいると知ったら、どんな気持ちになるだろう。
きっと、心穏やかではいられない。
「彼女?」
「……いや」
言葉少なにされた返答が、私の胸をチクリと刺す。
なんで。真尋は何も、嘘なんて吐いてないのに。
「真尋……?」
お母さんの声色が、困惑を帯びている。
ドラマや映画だったら、こういう時は抱き締めかえしたりするのかもしれない。
だけど真尋は、そうはしなくて。そこに含まれる意味が理解できてしまうから、つらかった。
「……久しぶり、母さん」
「久しぶりじゃないわよ!なんで大阪に……?」
「……まぁ、ちょっとな」
真尋の視線が私に寄せられ、お母さんがそっと振り向く。
慌てて頭を下げたけど、次に顔を上げるのが、少し怖かった。
だってそうでしょう?
1人の女性の人生を、自分の母親が狂わせてしまったかもしれなくて。
その娘が目の前にいると知ったら、どんな気持ちになるだろう。
きっと、心穏やかではいられない。
「彼女?」
「……いや」
言葉少なにされた返答が、私の胸をチクリと刺す。
なんで。真尋は何も、嘘なんて吐いてないのに。



