それを愛と呼ぶのなら

その様子からも、その女性が醸し出す雰囲気からも……彼女が真尋を生んだその人だということは、容易に理解できた。

真尋はどうやら母親似らしい。なんて考えていた、その時だった。


「──ママ!」


幼い声がそう呼んだのは。

それと同時に、あどけない男の子が家の中から姿を現し、女性に飛びついた。


『再婚してるんだ、数年前に。確か……子どももいる』

ふと、真尋の声で紡がれた言葉が頭を過る。

それじゃ、あの子は……。


頭の中での整理が追いつかないでいると、今度は男の人が現れた。

少し小柄な、人の良さそうな男の人。

じゃれ合う2人に歩み寄り、目を細めて笑う。

その姿は、どこからどう見ても……幸せそうな家族にしか見えないよ。


胸が締め付けられたように苦しくなり、真尋を見上げたけれど。


「……っ」


真尋は笑っていたの。悲しいくらい、優しい目をして。

この後に及んで、なんて顔してんのよ……。


「……やっぱ、別の方法見つけるしかねーな」


眉を下げて困ったように言った真尋は、あろうことか踵を返して歩き出した。