それを愛と呼ぶのなら

「……これで、決心ついた」

「決心って……」


お母さんに会う?

私が問うよりも先に真尋が歩き始めたので、結局何も聞かなかった。


大きな家が立ち並ぶ、住宅街。

車通りも少なく比較的静かな道を、右に曲がった──ところで、真尋が再び歩みを止めた。

あまりに急に立ち止まるので、思わずぶつかりそうになる。


な、なに……?

真尋の大きな背中の後ろから前を覗き込み、ようやくその理由を理解した。


十数メートル先にある、純日本風の大きなお家。

その門の前では、着物を着た女の人が、客人とみられる人達を見送っているところだった。

よく見ると、門の傍に【華道教室】という看板がある。


「ね、ねぇ。あの人って……」


真尋の服の裾をきゅっと握って訊ねてみたけど、返事はない。

まるで石像になってしまったかのように、真尋は微動だにしなかった。