それを愛と呼ぶのなら

真尋は気難しそうな顔をしたまま、ただぼうっと一点を見つめていた。

声をかけようかかけまいか迷っていた時、不意にその瞳が私を捉えた。

囚われて動けなくなった私に、真尋が歩み寄る。


「一瞬でいいから、手、握ってくれないか」

「……は?」

「だから、手」


ほら、と差し出された左手に、自分でも驚くくらい動揺してる。

さっきだって触れたのに。求められるだけでこんなにも違うなんて……。

しょ、小学生か……!

内心で自分自身にツッコミを入れつつ、冷静を装う。そして、そっと左手を重ねた。


「……っ」


触れた掌から、どうか伝わらないで。

こんなにもドキドキしてしまっていること。

こんなにも溶けてしまいそうなこと……。


「……サンキュ」


ゆっくりと、惜しむように離れていく手。

熱がひとつになったのは、ほんの数瞬の出来事だったのに、どうしてこんなにも寂しいんだろう。どうしてこんなに、冷たいの。